彼女はピンクが嫌いらしい。
そう口から聞いたのはおととい。
もう買ってしまった後だった。
どうして
どうして先走ってしまったのだろう
誕生日にネックレスを貰った
そのお返しというそんな陳腐な口実で
突然あげたら喜ぶかな
あいつ 何が似合うかな
これなんかかわいいな
何色が好きかな
喜んでくれるかな
笑ってくれるかな
そのピンクは嫌いという言葉を帰りの電車の中で聞いて
必死に涙を止めていた。
バカみたい・・・
そう思った。
10月10日
九時までのバイトを終え
一時間遅れで終わる彼女には
手紙を渡してあった。
バイト終わったら開けてください
一人で帰ればいいのに
やっぱり俺は駅前の歩道橋のベンチに
腰をおろしていた。
十一時近くにエスカレーターを乗ってきた人影が一つ。
彼女だ。
その無垢な瞳のなかに俺が映り
急いでかけてくる。
ちょこんと隣に腰を下ろす。
手紙 読んだ?
あ
またぁー すぐ忘れっずね。
ご ごめん。
急いで彼女が開いた手紙
その中には俺の拙い字と
桃色の宝石のついたネックレスが一つ。
たぶん涙目で笑う笑顔も一つ。
街灯に照らし出された光がふたつ。
ピンク 好き。
片言のように彼女が言った。
電車から降り
自転車でゆっくりと家に帰る。
俺が物理科に入ったのは
自分の生きている、人間がいる意味を知りたかったからかな。
でも
今日は
今日だけでも
あいつを笑わせてあげることができた。
それだけが理由だったと思いたい。
まだあいつに言ってないことある。
不安がいっぱいある。
全部俺が原因のこと。
それを言って
わかってくれたのは
まだ高校のころ好きだったやつ。
いつまで忘れないんだろう
一度断られたのに。
どうしてまだ忘れないんだろう。
それは恋ではなくなっているはずなのに。
ああ わかった。
たぶん自分見てるみたいだからだ。
やっぱり俺はあの頃から
動いてないのかな。
12時を回ってしまった国道の信号機は
長い間 赤でとまっていた。
「止まれ」を示すその赤は
車なんかほとんど通らないのに
ただ静かに
ただ静かに
光っていた。
ようやく青に変わる。
進んでもいいよ。
そう認められても
俺は進むのだろうか。
置き去りにされるのは嫌だから
そんな理由で来てしまったのかもしれない。
そんなことを思いながら
帰る夜空を
夜なのになぜか白い雲が半分を覆って
山のほうへ流れていて
吸い込まれそうに感じた。
錆びついた自転車のチェーンは小さな声を上げ
歯車とかみ合って
俺を運んで行くことを告げていた。
そう口から聞いたのはおととい。
もう買ってしまった後だった。
どうして
どうして先走ってしまったのだろう
誕生日にネックレスを貰った
そのお返しというそんな陳腐な口実で
突然あげたら喜ぶかな
あいつ 何が似合うかな
これなんかかわいいな
何色が好きかな
喜んでくれるかな
笑ってくれるかな
そのピンクは嫌いという言葉を帰りの電車の中で聞いて
必死に涙を止めていた。
バカみたい・・・
そう思った。
10月10日
九時までのバイトを終え
一時間遅れで終わる彼女には
手紙を渡してあった。
バイト終わったら開けてください
一人で帰ればいいのに
やっぱり俺は駅前の歩道橋のベンチに
腰をおろしていた。
十一時近くにエスカレーターを乗ってきた人影が一つ。
彼女だ。
その無垢な瞳のなかに俺が映り
急いでかけてくる。
ちょこんと隣に腰を下ろす。
手紙 読んだ?
あ
またぁー すぐ忘れっずね。
ご ごめん。
急いで彼女が開いた手紙
その中には俺の拙い字と
桃色の宝石のついたネックレスが一つ。
たぶん涙目で笑う笑顔も一つ。
街灯に照らし出された光がふたつ。
ピンク 好き。
片言のように彼女が言った。
電車から降り
自転車でゆっくりと家に帰る。
俺が物理科に入ったのは
自分の生きている、人間がいる意味を知りたかったからかな。
でも
今日は
今日だけでも
あいつを笑わせてあげることができた。
それだけが理由だったと思いたい。
まだあいつに言ってないことある。
不安がいっぱいある。
全部俺が原因のこと。
それを言って
わかってくれたのは
まだ高校のころ好きだったやつ。
いつまで忘れないんだろう
一度断られたのに。
どうしてまだ忘れないんだろう。
それは恋ではなくなっているはずなのに。
ああ わかった。
たぶん自分見てるみたいだからだ。
やっぱり俺はあの頃から
動いてないのかな。
12時を回ってしまった国道の信号機は
長い間 赤でとまっていた。
「止まれ」を示すその赤は
車なんかほとんど通らないのに
ただ静かに
ただ静かに
光っていた。
ようやく青に変わる。
進んでもいいよ。
そう認められても
俺は進むのだろうか。
置き去りにされるのは嫌だから
そんな理由で来てしまったのかもしれない。
そんなことを思いながら
帰る夜空を
夜なのになぜか白い雲が半分を覆って
山のほうへ流れていて
吸い込まれそうに感じた。
錆びついた自転車のチェーンは小さな声を上げ
歯車とかみ合って
俺を運んで行くことを告げていた。
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